今回は『オイラーの贈り物(吉田武)』を読んだ感想を書きます。
この本、実は大学生の時に購入し読んだものなのですが、先日同著者の『虚数の情緒〜中学生からの全方位独学法〜(吉田武)』の感想をアップしたことをきっかけに、こちらの感想も書きたくなり今回記事を書いてみることにしました。
内容
本書は、かの有名なオイラーの公式:
$$e^{±iθ}=cosθ±isinθ$$
を理解することを目標に、予備知識不要でゼロから読み進められるよう、パスカルの三角形に始まり、数列、微分、テイラー展開、三角関数など、オイラーの公式を理解する上で必須となる単元について詳しく丹念に述べたのちにオイラーの公式を導く形式となっています。
天才物理学者ファインマンは、オイラーの公式について
This is our jewel.(これは我々の至宝である。)
と述べたと言われています。
感想
虚数の情緒に続きこちらも相当に分厚い本で、読了には骨が折れますが、長い下準備を終えてオイラーの公式が導かれる様は感動的であり、これを電卓も無い18世紀の時代に発見したオイラーは天才だと感じました。
そもそもこの本を手に入れたきっかけは、同著者の『虚数の情緒』を読んでいたということもありますが、大学に入学し化学を専攻していた私は、高校で習っていないにも拘らず授業で幾度となく天下り的に多用されるこの”オイラーの公式”をしっかりと理解したいと思ったことにありました。
本書ではその目的が達成されただけでなく、科学分野に身を置く人間としては重要な『微分方程式の解法』や『フーリエ級数』についての知識を得られたことも収穫でした。
本書では『虚数の情緒』とは異なり問題(付録に解答付き)が多く掲載されており、実際に手を動かし、考えながら読み進めることができます。中々前に進まず苦しい本ではありますが、読了後の達成感はひとしおです。
簡単にオイラーの公式の導出を説明すると、
①cosθ+isinθを級数展開する。
②指数関数exp(x)の定義式を書き下し、xをiθに置き換える。
③両式を比較し繋いでやる。
これでオイラーの公式を導くことが出来ます。箇条書きにすると簡単に見えますが、この中には数学の基礎そして先人たちの努力がつまっており、本書でそれを味わうことができました。
さらに、このオイラーの公式の中の\(θ\)へ\(π\)を代入してやると、
$$e^{iπ}=-1$$
と、本書の表紙にもある世にも美しい関係が現れます。
無理数\(e\)と\(π\)、虚数\(i\)そして整数\(-1\)がこんなにも簡潔に結びついてしまう様はまさに感動です!
評価
全516ページ
おすすめ度:★★★★☆
問題の充実度:★★★★★
公式が導かれる感動:★★★★★
補足(オイラーの公式っていつ使うの?)
オイラーの公式が美しいことはわかっていただけたのでは無いかと思いますが、じゃあこの公式っていつ使うの?という疑問を持った方をいるかもしれません。
この公式、高校までの授業で出てくることはありませんので文系の方にとってはあまり馴染みのないものかもしれません。しかし現代の科学技術にはなくてはならないもので、理系の世界では誰もが知る実用的にも非常に有用な関係式です。
そう、この公式はただ美しいというだけではないのです!
例えば、量子力学の世界で波動関数ψの表現として、また電気工学の世界での電流波形の表現などへ積極的に使用されています。
オイラーの公式はただの数学の遊びではなく、科学技術の発展に大いに役立っているのです!