今回は、『職業としての小説家(村上春樹)』を紹介します。
最近村上春樹がマイブームでして、特に会社の昼休みに彼の小説をよく読んでいます。一つ一つの章が30ページくらいの細切れになっていることが多いので、昼休みなど限られた時間に読みやすい作家さんだなあと感じています。
ということで私は毎日毎日村上春樹を読んでいるので、いつも村上春樹が頭から離れません。(笑)
そして小説家としての彼についてもっと知りたい!と思うようになってきたので今回この本を手にとってみました。それに小説家って一体どんな風に仕事をしてどんな風に生活してるの?といったことも気になります。
内容
本書の内容は自伝的エッセイです。村上春樹が小説家とはどんな人間でどんな仕事をしているのかを、自身のこれまでの歴史を振り返りながら綴ったものになっています。全12話が収録されている作品で、目次だけここに記載すると、
目次
1.小説家は寛容な人種なのか
2.小説家になった頃
3.文学賞について
4.オリジナリティーについて
5.さて、何を書けばいいのか?
6.時間を味方につけるー長編小説をかくこと
7.どこまでも個人的でフィジカルな営み
8.学校について
9.どんな人物を登場させようか?
10.誰のために書くのか?
11.海外へ出て行く。新しいフロンティア
12.物語のあるところー河合隼雄先生の思い出
といった内容になっています。1~6話までは雑誌『MONKEY』に連載されていた文章で、7~12話は書き下ろしという形になっています。
感想
小説家、村上春樹の人となりみたいなものが良くわかる作品だと感じました。彼がなぜ小説家になったのか?とか、どんな生活をしているのか?とか、彼自身たぶんいろんな所で語っているのだとは思いますが、そういった読者が気になることが本書にはまとめて綴られています。言うなればこれは、村上春樹の半生を書き著した書物であり、タイトルを『村上春樹の自叙伝』としても差し支えないかと思います。
小説家になったきっかけ
そもそも彼が初めて小説を書いたきっかけというのがとても面白く、そして村上春樹らしく(?)ミステリアスなことが書かれていました。
それは彼が29歳の頃、野球場でヤクルト対広島戦の観戦をしていた時にふと、自分にも小説が書けるかも知れない!と感じたのだそうです。その時の感覚が小説家らしく妙に具体的に詳細に綴られていて、何回の誰がどこにヒットを打った時とか、非常に細かい記述があります。
そんなの本当か?作り話じゃないのか?と思ってしまいそうな内容ですが、こう言ったピンポイントのディティールを大事に保管しておける人種が小説家という生き物なのだと思います。ここで語られていることは多分真面目に本当のことを書いているんだろうなあ、と思いました。この時の感覚を村上春樹は、
“それは空から何かがひらひらとゆっくり落ちてきて、それを両手でうまく受け止められたような気分でした。”p47
と綴っています。やはり小説家らしい表現の仕方だなと思います。
小説家って大変
今では一流の小説家として、彼の名が世界中に知れ渡っていますが、ここに至った道のりについても詳しく書かれていました。日本で『ノルウェイの森』が売れた後、ニューヨークへ自分の足で作品を売り込みに行って、たくさんの苦労や試行錯誤を経たことによって、彼の今のポジションが確立されてきたのだそうです。
小説家といえども、ただ職人気質で良いものを作っていれば食っていけるというわけではないようで、自分の作品を世に知ってもらう営業力も必要なのです。村上春樹は、良い作品を作る創作力と、自分の作品を信じて海外へ足を伸ばした営業力の両方を兼ね備えていたからこそ、大成することが出来たのでしょう。
このような営業力ももちろん素晴らしいですが、なんといっても小説家というのは、売れるかどうかもわからない長い物語を、来る日も来る日も少しづつ書き溜めて、そして見直して見直して、見直して、、、やっと完成させる。そんな途方もない作業を何度も乗り越えているということに、大げさでなく尊敬する気持ちを抱きました。最近「1Q84」を読みましたが、500ページを超えるハードカバーを3冊使って一つの物語を描いていて、読むだけでも十数時間を要しました。これを書くとなればどれだけ時間のかかることやら。。。
もはやクレイジーです。
書き物を趣味とするブロガーにとって小説家は憧れの職業ではありますが、この本を読んでみて、いろんな意味で自分にはできそうにない職業だなと感じてしまいました。
でも死ぬまでに一作品くらいは遊びで作って出版してみたいなというささやかな野望はあります笑。
最後にひと言、小説家ってすごい!
評価
おすすめ度:★★★★☆
憧れ度:★★★★★
小説家へのモチベーション:★★☆☆☆
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