今回紹介するのは『理科系の作文技術(木下是雄)』という中公新書の書籍です。
学習院大学の学長も務めた物理学者、木下是雄(1917-2014)が遺した名著。
1981年に初版が刊行されて以来、100万部以上を売り上げているまさしく理系文章の教科書的な実用書です。
なんだかお堅そうな本ですが、技術職として生きる人間にとっては必読ということで会社の方に勧められたことをきっかけに、実際に購入して読んでみました!
内容
理科系の作文技術について具体例を混じえながら、『簡潔な表現』という点に主軸をおいてわかりやすくまとめています。伝えるべき内容を効率的に、誤解無く伝えるための心得から実用的な手段に到るまで丁寧に述べられています。
理系の学生はもとより若手の技術者を対象として書かれた書籍です。
感想
読み始めてまず感じたのは、かなり上から目線だなという印象で、木下氏に一方的に叱られているような感覚でした。笑
しかし読み進めていくうちに確かにそうだと納得する部分が多くあり、一気に読了してしまいました。叱られているように感じたのは、おそらく自分に心当たりのあることを指摘されていたためでしょう。
印象的だったフレーズ
本文中には確かにそうだなと腹落ちするフレーズがいくつかありましたので、個人的に印象に残ったものをここで3つご紹介します。
①書くことに慣れていない人は、誰が読むのかを考えずに書き始めるきらいがある。
②仕事の文書を書くときには、事実と意見の区別を明確にすることが特に重要である。
③一文を書くたびに、その表現が一義的に読めるかどうかを吟味すること。
この三つフレーズを見ていただけると、本書の内容がある程度イメージできると思います。
私個人としては三つ目の文章が一義的に読めるか?という文書作成の心得とも言えるフレーズがお気に入りです。これは確かに理系の仕事の文書を書く上で重要なことですが、私はこれまであまりここに配慮ができていなかったように思います。ひどいときには自分が伝えたいことが曖昧な状態であるが故に、読者次第で多数の解釈ができてしまうような文章を書いたこともあるように思います。これでは理系の文書としてはいけません。
これらのフレーズを胸に刻んで、今後の文書作成に役立てようと思いました!
逆茂木型の文章
本書の中で特に印象に残っている内容としては、5章の文章の構造について述べているところで、悪い例として登場する『逆茂木型の文章』というものです。ここで少し紹介しようと思います。
逆茂木型の文章
この逆茂木型の文章とは、上の図のように”枝”となるいくつかの独立した文や文節が合わさって説明したい事の本流である”幹”へと合流し最終的に結論が導かれるような文章のことです。
このような構造では、読者はいくつかの”枝”をインプットした状態で”幹”となる本流への合流を待たなけれはならないため文章は読みにくくなってしまいます。日本語ではこのような構造になっている事が多く、読みやすい『簡潔な表現』を目指すならば、”幹”を外れず常に本流で説明を展開して結論へ至る方が良いのです。
文章の構成に私がこれまで仕事で書いてきた文章を省みてみると、本書で言う『逆茂木型の文章』に無意識になっていることがあるなと思いました。特に説明したいことが多かったりする場合には、結論に到るまでに必要な武器となる文節がバラバラにとっちらかってしまって読者の読む気が失せるような文章になることが多々あるように思います。
日頃から意識的に読みやすい文章を書くよう訓練をして、無意識に読みやすい文章がかけるようにしたいなと思いました。
とは言え、ブログに関して言えば必ずにもこの書籍を習う必要はないかなと思っています(ここまで説明してきて何ですが笑)。
読みやすい文章を書くことはたしかに必要だと思いますが、一番は大切なのは情報の溢れるこのネット世界の中で読者の目に留まる魅力的な文章を書くと言うことだと思います!(ドヤ)
ブログに関しては、寄り道したり、脱線したり、くだらない様な話題も交えながら、自分にしか書けない魅力的な文章を目指したいと思います。
そのほか、『:』と『;』の違いなど実用面でも大変参考になりました。
評価
おすすめ度:★★★★★
上から目線の嫌悪感:★★★★☆
納得度:★★★★★
- 作者: 木下是雄
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 1981/09/22
- メディア: 新書
- 購入: 107人 クリック: 1,559回
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なお、漫画版の書籍も出版されているようですので参考までに。
こちらは書店でパラパラとめくってみましたが、30min位あれば読めそうな雰囲気でした。「エッセンスだけ時間をかけずに知りたい!」という方には漫画版も良いかも知れません。
- 作者: 久間月慧太郎,木下是雄
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2018/01/19
- メディア: 単行本
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